請求書の内容を会計ソフトに打ち込む。エクセルの数字を別のエクセルに転記する。手書きのメモをWordで清書する。紙の申込書をシステムに入力する——どの会社にも、この種の「右から左へ写す仕事」が毎月コンスタントに存在します。
「生成AIでできること」シリーズ第3回は、この繰り返し作業からの脱却です。地味なテーマですが、実は費用対効果が最も分かりやすい領域です。
ビフォー: 「写す仕事」が優秀な人の時間を食べている
転記作業の問題は、時間だけではありません。第一に、ミスが出ます。人間は同じ作業を100回繰り返せば、必ずどこかで打ち間違えます。第二に、担当者のやる気を削ります。「自分はこれをやるために入社したのか」という仕事ほど、離職の遠因になります。第三に、繁忙期に集中します。月末月初・年度末に、他の仕事を止めて発生するのです。
AIに任せると、こうなる
AIエージェントは、ファイルを直接読み書きできるため、「形式を変えて写す」仕事をまるごと引き受けられます。指示文の例です。
このフォルダにあるPDFの請求書(約40枚)から、
発行日・取引先名・金額・支払期日を読み取って、
経理提出用のエクセル一覧表(いつものフォーマット)にまとめてください。
金額の合計欄も付けて、読み取りに自信がない箇所は黄色でマークしてください。40枚の手作業なら半日仕事ですが、AIなら数分です。ポイントは最後の一文で、AIに「自信がない箇所」を申告させることで、人間のチェックはマークされた箇所だけで済みます。
私たちの実例では、週2時間かかっていた業務管理・報告系の作業が週5分になりました。5分というのは、AIの成果物を確認する時間です。例えば当社の経費精算から会計システムでの仕分けは人を介さない仕組みになっています。経費精算するメンバーは社内チャットの経費精算用のチャットに領収書や請求書のデータ・キャプチャ(写真)をアップするだけです。あとはAIが自動的に科目や金額を読み取って仕分けしてgoogleスプレッドシート(web上のエクセルのようなツール)に記載し、顧問税理士に情報を連携してくれます。
つまずきポイントと対処法
- 最初の1回は必ず全件検品する: AIの読み取り精度はかなり高いものの、手書き文字や崩れたレイアウトでは間違えます。初回に全件チェックしてクセを把握し、2回目以降はマーク箇所の確認に絞るのが現実的です
- 例外ケースの扱いを決める: 「フォーマットが違う請求書が混ざっていたら、処理せずに報告して」と指示しておくと、AIが勝手に判断して間違えることを防げます
- うまくいった手順は書き残す: 2回目からは「先月と同じやり方で」と言えるように、手順をAIに記録させておきます。これが次々回に紹介する「スキル化」につながります
「写す仕事」がなくなった後に残るもの
転記をAIに任せた会社で起きるのは、単なる時短ではありません。ミスの確認や差し戻しといった二次作業が消え、繁忙期の残業が減り、担当者は判断が必要な仕事に移れます。「人にしかできない仕事は何か」が、はっきり見えてくるのです。
次回は、週次・月次の報告資料の作成編です。
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この記事の要点
- 転記・清書・形式変換などの「写す仕事」はAIエージェントの得意領域。40枚のPDF請求書の一覧表化が数分で終わる
- 「自信がない箇所をマークさせる」指示で、人間のチェックはマーク箇所だけに絞れる
- つまずき対策: 初回は全件検品してクセを把握 / 例外は処理せず報告させる / うまくいった手順は記録させる
- 効果は時短だけでなく、ミスの二次作業の消滅・繁忙期の平準化・担当者の高付加価値業務へのシフト
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